花と食で人生をカラフルに彩り、女性を多方面から美しく輝かせる「ポム・ルージュ」

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もともと、先生になりたかった

― スタジオ『ポム・ルージュ』を主宰される田谷玲子さん。
フラワーアレンジメント教室や薬膳講座など幅広く活動されてらっしゃいますね。短大を卒業後に、すぐ花の世界へ入られたんですか?

いえ、それが実は、金融業界で企画や営業など20年働いてました。

― そうなんですね、20年も!

こども教育の教材などをメインで扱う出版社の、信販部門で働いていました。出産や転勤などで離れた時期もありましたが、20年ほどになりますね。扱うものが図鑑や百科事典などわりと高額なので、社内に信販部門があったんですよ。

― なるほど。ご結婚はおいくつの時ですか?

26歳ですね。仕事はすごく面白くて、当初は結婚を考えてなかったんですが、とにかく残業がすごかったんです。朝9時から夜10時まで働くのが当たり前でした。結婚しても仕事を続けていたのですが、妊娠したとたん会社の空気が「いつ辞めるの?」に変わったんですよ。

― 昔は育休制度なんてありませんものね。平成の話ですか?

平成2年ですね。当時は今みたいに育休制度もなく、臨月まで働いたあとは辞めざるを得ませんでした。

― 平成2年でも「いつ辞めるの?」なんですね。
小さい頃の夢はありましたか?短大で栄養学を学ばれたとか。

小学校の先生になりたいと漠然と思ってましたが、定食屋を営んでいた母の手料理がとにかく美味しかったこともあって、料理や栄養学に興味が移っていきました。母がいないときは、自然と私が料理を作ったりしていたので、その影響もあってか栄養学を学ぼうと思ったのだと思います。

― 素敵ですね。出産で仕事を辞められて、子育てが始まって、どうでしたか?

夫がとにかく忙しくて、単身赴任も多く、ほぼ母子家庭みたいな状態ですね。

― 今でいう「ワンオペ」ですね。

はい。とにかく必死で子育てしていましたね。でも、もともと仕事が好きだったので1年くらいで社会復帰したいな、と思っていたところ、娘が1歳の時に小児がんになったことがわかって。

― まぁ! 大変でしたね。

栄養士の資格はありましたが、当時、栄養士の仕事は今ほど職がなく、病院、事務所、社員食堂くらい狭き門で、なかなか空きがないんですね。どうしようかといろいろ考えていた矢先に、娘のがんがわかり、働くどころではなくなりました。

― それは大変でしたね。娘さんは治られたんですか?

はい。がんの場合、完治とは言えないため寛解ではあるんですが、おかげさまで20年経っています。 ただ当時は、リスクが「五分五分です」とお医者さんに言われ、専門的知識がないままにさまざまな治療の選択をつねに迫られるのが大変なストレスでした。 おそらくそれが原因ですね、20代で若年性更年期障害になってしまって。

― え! 20代で?

29歳くらいの頃です。
娘の入院時にめまいを起こすようになって、病院で調べてもらっても異常はなし。検査しているあいだも娘から離れられないので、とりあえず対症療法として薬をもらったんですが、その薬の効きめがあまりに強すぎて、怖くなりましたね。薬を飲むとシャキッとするのがわかるんですよ。

― そんなに若いうちから更年期障害があるなんて、知りませんでした。

私は小さい時からピリン系の鎮痛剤が飲めないほど薬アレルギーがあったのと、さっき言った薬は効きめが強すぎることもあって、漢方治療を始めました。それでも、しばらくは買い物も行けないほど辛かったんです。半年ほど漢方を飲み続け、少しよくなってきて、娘の症状も落ち着いてきた頃に前の会社から復職しないか、と連絡がありました。

― よかったですね、前の職場からお声がかかって。

そうですね。最初は驚いたんですけど、幼稚園の娘がいる事情に合わせてくれて、復職しました。とにかく人手が欲しかったみたいです。

― よかったですね。その後、ご主人の転勤で山口から福岡に引っ越しされた。

はい。他の会社で働いたりもしたんですが、ここでも前の会社から声がかかって、任せたいから来てもらえないか、と。経理しながら営業業務など、全般的な仕事をさせていただきました。7年ほど仕事していたんですが、父が心筋梗塞で亡くなった3年後に母が末期がんにかかり、母の看病のため退職しました。母は半年後に亡くなりました。

― 大変でしたね。いろいろな習い事をされていたのは、ご両親の死と何か関係がおありですか?

両親が続けて亡くなって、仕事もしておらず、ふと「私には何もないな」と思ったのがきっかけです。いずれ娘も大きくなり、巣立っていくわけですから。

両親を見送って「私には何もない」と思った私のそばに、花がいた

― 趣味などはあったんですか?

それが、特になくて(笑)。誘われるままにフラワーアレンジメント、書道、パステルアート、マクロビオティックなどいろいろ挑戦しました。

その頃、このままではいけないな、と保険営業の仕事も始めたので、仕事と習い事を並行して、週に6日動いていましたね。 フラワーアレンジメントのインストラクター資格や、ファイナンシャルプランナーの資格も取りました。

― 仕事もしながら、ただの習い事で終わらせず、花の資格も取られてすごいですね。

フラワーアレンジメント教室の先生が引っ越すからと、ひょんなきっかけで私が教室を引き継ぐことになったんです。実はお花って、習っても、資格は取らない人が圧倒的に多いんですね。なので、習っている人はいても教室を引き継げる方が私以外にいなかったようです。

私は早々に資格を取っていたので、先生から「インストラクターにならないか?」と、お声がかかったのかもしれません。とはいえ営業の仕事もあったので、インストラクターと合わせて週に6日働いていました。

― 習い事って、自分を模索するようなところがありますよね。

そうですね。何をしたいのかがわからない。それなら、興味のあるものは片っ端からやってみよう!と。一時期、1週間がすべて習い事のスケジュールで埋まってました。

― すごい! 40代前半ごろですか?

はい。父が亡くなり、母が亡くなって、と、もぬけの殻状態だった私を見かねた友達が「ちょっとお花を習いにいってみない?」と声をかけてくれて。そのまま教室に入って、インストラクターの資格を取りました。

― いろいろな習い事を経験されて、とりわけ花に惹かれたのはなぜでしょう?

お花があるのとないのとでは、家の中が変わりますよね。なくても生活はできるけれど、お花があれば家が明るくなる。自分の気持ちも上がる。私自身、両親を続けて亡くし精神的に大変だったときに、花に救われたという経験がありますね。花があるだけで、どこかホッとするんです。

― まさに、花の力ですね。

今、私の講座へ通われている50代の学校の先生に「なぜお花を習っているんですか?」と訊いたところ、私と同様、花に救われた経験をお持ちでした。

その方は弟さんを亡くされて、葬儀でたくさん届いた花に癒やされたのがきっかけで、お花を習いたいと思ったそうです。ああ、やっぱり、そうだよね、と。お花に関わる仕事の意味を改めて感じました。

長年お花を教えていると、なかには介護や家の事情で講座からしばらく離れていた方が、落ち着いてから再開される方も多いです。

― それはすごい。教え方もきっとお上手なのでしょうね。
同じ生徒さんがずっと長く通われているのは、続けやすさもありますか?

そうですね。1回あたりお花代込みで3,500円という続けやすい金額ということもあると思います。月謝制ではないし、行きたい時に行ける気軽さもあると思います。
もちろん毎週通われている方もいらっしゃいますよ。

― 細く、長く、ずっと続けられているんですね。

そうですね。お花の癒しの力や、ホッとさせる魅力がそれだけあるのだと思います。

― 今日お会いした田谷さんの醸し出す雰囲気、お花の持つしなやかさにぴったりだなと感じました。

営業をしていた時はキリッとテキパキ動いていましたが、お花を触っていると不思議とフワッと柔らかい感じになりますね。

― でも経理や営業など長年続けられ、離職しても前の会社から戻ってきてほしいと言われるなんて、案外、営業も向いていたのでは?

自分ではわからないですが、目の前の相手に対して誠実であることは意識していましたね。人と関わるお仕事は、やっぱり信頼が大事だと思っていましたから。それに、楽しかった、というのも大きいです。やっぱりお客さんから「ありがとう」って言われると、嬉しくて。お客様から、会社で選んでいるんじゃなくて、あなたがいるから選んだのよ、と言われるのも嬉しかったですね。驚いたのが、昔のお客さんから以前Facebook経由で連絡があり、あなたからの手紙をぜんぶ取っていますと言われたことですね。あなたの字がとても好きだったから、と言われて感激しましたね。書道の習い事も無駄じゃなかったな、なんて(笑)。

― 思いがけない喜びですよね。前の仕事からの縁で、お仕事の依頼がありますか?

それもあります。会社のお客様感謝デーなどのイベントに、あちこち呼んでいただいています。フラワーアレンジメントの仕事や、講師としてのお仕事など。ありがたいですね。

― 精力的に動いていらっしゃって、素晴らしいです。
田谷さんは、お花のほかに、薬膳の講座をされてらっしゃいますね。

私がもともと薬アレルギーで、漢方で体質改善をしてきた経緯もあり、薬膳そのものに前から興味があったんです。 マクロビオティックも学んだのですが、私にはどちらかというと薬膳の方が合うなと思ったんですね。

― どういったところが?

マクロビは動物性のものを摂らない代わりに、代替で小麦粉などをたくさん使います。薬膳は何を食べてもOKというのが前提で、そのうえでこの時季はこういう食べ物を摂った方がいい、という考え方なんですよ。

― 旬のものを、という考え方ですか?

そうです。なので、マクロビ・薬膳それぞれのいいところを取り入れながら柔軟に薬膳ができたらいいな、と思っています。 お花の時もそうでしたが、薬膳でも素晴らしい先生との出会いがあって、そこで学んで薬膳の資格も取得しました。講師になることを勧められて今に至ります。

― ここでも講師になることを勧められるのは、人と誠実に向き合う田谷さんらしいです。
フラワーアレンジメントの講師を引き継がれた流れと似ていますね。
薬膳の講座では、どんなことが学べるのでしょうか。

春夏秋冬それぞれの季節に沿った養生などですね。 「薬膳の考え方を」といっても難しいものではなく、実生活に役立つことをお伝えしています。

薬膳の考え方は中医学からきていて、季節ごとにいたわる内臓や気をつけるべきところが違うんですね。例えば、春なら肝臓を、夏なら心臓をいたわりましょう、そのためにはこういう食べ物がいいですよ、と。なるべく難しい講座にはせず、あくまで普通のご家庭での料理にこういった野菜を取り入れましょう、という内容ですね。

― おもしろいですね。たとえば春なら、何を摂ればいいのですか?

春は、肝臓をいたわる季節ですね。そのためには緑のものをたくさん食べましょうと教えています。春って、芽吹きの季節でしょう? 緑のものが体にいいんです。その季節季節で手に入れやすいものを食べましょう、ということですね。

― 「旬のものを積極的に食べましょう」と昔から言われるのは、理にかなってるんですね。

そうですね。薬膳の考え方は今から2000年前ほどの中国の中医学がルーツです。「皇帝を病気にさせないための献立」が元なんです。皇帝が病気にならないように毎日体調をチェックして、献立をたてていたのが薬膳の始まりと言われています。

― そんなに古くからある教えなんですね。

昔は「食医」という、皇帝に提供する毎日の食事を考え管理する最高位のお医者さんがいたんですね。皇帝を病気にさせてはいけないという重要な役割をになっていた彼らが行なっていた食事の管理が、薬膳の始まりと言われています。

― 病気にならない、予防としての食事の考え方ですね。

はい、予防医学ですよね。

― そういったことも講座で学べるんですか?

実際は、そこまで詳しく知らなくてもいいとも思っています。多くの方はやっぱり、いつ、どんなものを食べたらいいの?といった実生活に根ざしたことを知りたいんですよね。なのでまずはそこをお伝えして、次にその背景となる考え方をお伝えします。「今だったら緑のものを食べたらいいですよ」「え、どうして?」となりますから、自然に知識がはいってくるわけです。

― 先ほどからお話を伺っていて感じたのは、伝えるのがとてもお上手ですよね。わかりやすいです。

難しい言葉を知らないだけです(笑)。

― 田谷さんの話し方は柔らかく表現も的確で、伝わりやすいです。

ありがとうございます。営業で働いていた時のテンションと、お花を教えている時のテンションはかなり違うので、メリハリのようなものが身についたのかもしれません。普段は5〜6人くらいの少人数の講座などでリラックスした雰囲気でお話しさせていただきますが、企業からの依頼も多いので、その場合は人数が多くなりますね。スイーツと薬膳茶などをお出しして、なごやかに講座を行うスタイルが多いですね。

― 教え方も上手なのでしょうね。田谷さんにとって講師業は楽しいですか?

はい、楽しいですね。ずっと続けたいです。

― 最後に、好きな言葉はなんですか?

「信頼」ですね。

思い返してみれば、金融関係の仕事をしていた時も、習い事をしていた時も、そして今のお仕事でも、一貫して人との信頼関係を築くことを大切にしてきました。「目の前にいる人の信頼に応えたい」姿勢はずっと変わらない気がしています。

― ありがとうございました。

photographer – 高巣秀幸
Interviewer – 村山由香里


村山由香里
株式会社フロイデギズモ編集長
兼チーフインタビューアー

元株式会社アヴァンティ編集長兼代表取締役。25年続き、福岡、北九州、熊本で発行した情報誌『アヴァンティ』では、「働く女性を応援する」をコンセプトに地元女性の生きる働く「いま」を取材し、時代の息吹を伝えた。また、2010年より5年間、福岡県男女共同参画センター館長として、次世代女性リーダー養成講座「ふくおか女性いきいき塾」の開催や、センターと経済界の連携、男女共同参画をわかりやすくWEBやSNSで発信など先駆的な取り組みをし、現在は、講演、執筆活動に加え「天神キャリア塾」をスタート。その人の魅力を引き出すインタビューで良質なコンテンツの創造に尽力している。


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